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1.2.1 イオン化プロセス

イオン化とは、中性粒子を分析するための1つのプロセスで、サンプルガス[4,5]に大きな作用を及ぼします。気相に存在する原子や分子は、低エネルギーの電子を衝突させることにより一部がイオン化(電離)された状態になり、一価または多価の正イオンが生成されます。生成されるイオンの数やタイプは、衝突する電子エネルギーに大きく左右されます(図6)。

図6 電子エネルギーに対する電子衝撃によるイオン化効率

中性粒子のイオン化は、電子が最少エネルギー(出現電圧またはイオン化閾値電圧)以上になると始まります。生成されるイオンの数は電子のエネルギーが大きくなるにつれて急速に増大し、50〜150 eV(ガスの種類によって異なる)で最大に達しますが、その後は電子のエネルギーが増大するにつれ次第に減少してゆきます。生成されるイオンの量(感度に関係)は、できるだけ多くする必要があるため、ほとんどの場合、イオン化は70〜100 eVの電子エネルギーで行われます。ガスの成分kのイオン電流i+kは、次の式で求められます。



ここで、
i- = 電子(エミッション)電流 [A]
l = 電子の平均自由行程 [cm]
s = kのイオン化係数  1/[cm ・ mbar]
pk = kの分圧 [mbar]
 
分子のイオン化の場合は、生成され得るイオンの種類は分子が複雑になるにつれて大きく増大します。一価および多価の分子イオンに加え、フラグメントイオンも出現します。
 


これらの種類のイオンのほかに、AC+のような転配置イオンも出現する可能性があります。各種類のイオンの出現および相対存在比は、分子の種類によって異なるため、分子の特定およびガスの定性分析のための重要な手がかりとなります。

図7は、70 eVの電子エネルギーにて記録した単純な分子CO2のフラグメントの分布(フラグメント分布または開裂パターン)を示したものです。QuadStarTMソフトウェアのスペクトルライブラリには、参照頻度の高いいくつかの種類の気体や化合物のフラグメントイオンの分布データが用意されています。ただし、実際の分布はイオン化エネルギー、温度、質量分析計のトランスミッション特性などのパラメータによって左右されるため、スペクトルライブラリの分布データはあくまで1つの目安でしかありません。

図7 CO2フラグメント分布

図8に示すように、電子エネルギーを低く設定することにより(ここでは<43 eV)、多価のイオン生成を大幅に抑制することができます。この方法は、たとえばAr/Neの混合ガス分析において有効であり、質量数20に対する40Ar++による寄与度を最小限に抑えることができ、質量数20での20Neの検出限界値を低くすることができます。
このカタログに記載したすべての質量分析計(一部のモデルは除く)は、衝突させる電子のエネルギーを10〜150eVの範囲で連続的に可変させることができます。
複数の成分からなる混合ガスの分析では、しばしば特定の質量数において異なるいくつかのガス成分に起因するイオン電流がオーバーラップするという問題に遭遇します。

図8 電子エネルギーに対する電子衝撃によるArのイオン化効率

図9は、質量数のイオン強度が単一のガス成分のみによって決定される例を示しています。
(アルゴンは質量数40、酸素は質量数32、二酸化炭素は質量数44、水は質量数18)
その他の質量数に関して検出されたイオン電流の総強度は、それぞれのガス成分から生成されるさまざまなフラグメントイオンの電流を足し合わせることにより決定されます。

図9の例では、質量数16のイオン電流の強度は、酸素、水、二酸化炭素、および一酸化炭素のフラグメントイオンをもとに決定されます。そのため、この質量数は、酸素の濃度あるいは酸素の分圧を定量的に決定するのに適しているとはいえません。したがって、質量数16ではなく質量数32で測定した強度を使用します。図9の例でとくに面倒なのはCO濃度の決定です。COの濃度は、単純に質量数28における総イオン電流の強度からN2分のイオン電流(質量数14におけるフラグメントイオン比N+/N2+が分かれば算出可能)とCO2分のイオン電流(質量数44におけるフラグメントイオン比CO2/CO+が分かれば算出可能)を差し引くことにより求められます。

図9 イオン化エネルギー90eVで得られた混合ガスのマススペクトラム

分析対象の混合ガスの組成や濃度比によって、特定の測定に適したアルゴリズムやキャリブレーション手順を工夫することが可能です。それには、ガスの定量分析を行う前に、個々の成分がオーバーラップしないキャリブレーションに適した混合ガスを使用して個々のガス成分のキャリブレーションファクターを決定する必要があります。それが済めば、マトリックス計算の範囲内でこれらのガスの濃度や分圧を決定することが可能になります。
QuadStarTMソフトウェアは、これらのマトリックス計算、およびキャリブレーションルーチンをサポートしています。

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